仕事が終わって、いつものように電車に乗った。
考えごとをしていたら、1駅乗り過ごしてしまった。
「あ~あ」
ため息をつきながら帰っていると、前を歩いていた女性が私の住むマンションに入って行った。
女性はエレベーターを待っている。
いつもなら同乗しないが、今日は疲れている。
一刻も早く家に帰りたい。
軽く会釈をしてエレベーターに乗り込み、自分の階のボタンを押した。
女性は後方にいる。
扉が開いたので、そそくさとエレベーターを降りた。
私の後に続いて、彼女もエレベーターを降りた。
隣の部屋の住人か。
そんなことを考えながら、鍵を差し込む。
開かない。
なぜだ。
女性はずっと後方にいる。
なぜだ。
鍵穴を見て、鍵を見て、部屋番号を見る。
下の階だ。
振り返ると、彼女はふふっと笑っていた。
彼女の部屋だった。
平謝りして急いでその場を離れたが、ふと気づく。
エレベーターの後方にある階数表示は、押された階が全て光る。
彼女は気づいていたのではないか。
私が間違った階で降りたことも。
彼女の部屋の前で鍵を回していたことも。
そして、また思う。
なぜだ。
なぜ最後まで見届けたのかと。
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