カテゴリー: 道具

  • なぜ私の鉄フライパンは黒くなるのか — それがいい兆候である理由

    以前、料理をする前に鉄のフライパンをティッシュで拭いたら、ティッシュが黒くなった。

    最初は有害な物質ではないかと思った。

    でも調べてみると、無害なものだと分かった。


    ティッシュには何がついているのか

    主な原因は二つある。

    一つは、炭化した油と食材のかす。調理の度に表面に蓄積する残留物で表面に乗っているだけなので、洗えば落ちる。

    もう一つは、鉄の粒子。フライパンの表面が物理的に削られることで生じる。スチールウールのような研磨力の強いもので洗っていれば、それが原因かもしれない。ポリマー層が育つにつれて、こうした削れは徐々に減っていく。

    私のがどちらだったのか正確には分からないが、少量の洗剤で洗うようにしたら、ティッシュは黒くならなくなった。
    謎の一部は解けた。


    もう一つの疑問

    洗剤を使い始めた時、せっかく育ててきた油の層が落ちてしまうのではないかと心配になった。
    でも実際には、フライパンの性能はほとんど変わらなかった。

    なぜなのか。

    洗剤では落とせない「別の黒」が、フライパンの表面に残っていたからだ。


    ポリマー層とは何か

    鉄のフライパンを高温で繰り返し使うと、油が酸化重合という反応を起こす。油の分子同士が結合し、固体の安定した層を表面に形成する。これがいわゆる「シーズニング」で、鋳鉄のスキレットや中華鍋でも同じ現象が起きる。

    この層は、軽くこすったくらいでは落ちない。
    激しくこすったり長時間浸け置きしたりしなければ、食器用洗剤で分解されることはない。

    だから洗い方を変えても、調理の具合がほとんど変わらなかったのだと思う。


    なぜ鉄フライパンだけにポリマー層が出来るのか

    フッ素加工(テフロン)やステンレスのフライパンには、同じような層は育たない。その理由は、鉄という素材の性質にある。

    鉄フライパンは表面に微細な凸凹があり、多孔質になっている。
    油の分子が入り込み、高温での酸化重合によって固体の層として定着する。

    フッ素加工の表面は化学的に不活性で、油を含め何もくっつかない。ポリマー層が形成される余地がなく、そもそも「くっつかない」よう設計されているので、層は不要でもある。

    ステンレスは表面が比較的滑らかで密度が高く、鉄ほど油が入り込む隙間がない。酸化重合は起きても、安定した層として残りにくい。

    つまり、鉄フライパンは「油を受け入れやすい粗い表面」と「高熱での化学反応」の組み合わせによって、ポリマー層が形成されやすい環境となっている。


    黒さは熱の地図

    ”黒”の入り方は均一ではない。
    フライパンの底を見ると、リング状――ドーナツ型に黒くなっている。ガスバーナーは炎をリング状に出すため、熱が集中するのも炎が直接当たる部分だ。重合は温度が高いほど速く進むので、そこから層が育ち始める。

    つまり、フライパンの黒さは熱の地図でもある。

    使い続けるうちに、シーズニングはそこから外へと広がっていく。


    錆との見分け方

    ポリマー層と錆は、見た目と手触りで区別できる。

    ポリマー層
    見た目均一な黒〜濃い茶色赤茶色、まだら
    手触りなめらか、マットざらざら、剥がれる

    ポリマー層が育つにつれて、表面の微細な隙間が埋まり、錆が生じ難くなる。
    錆が出るとしたら、層がまだ薄いか、傷ついているサイン。


    終わりに

    私は意図的なシーズニングを一切していない。
    オーブンで焼いたことも、油を何度も重ねて加熱したこともない。普通に料理をして、少量の油を使い、必要な時に洗う。

    ただそれだけ。

    それでも、フライパンは少しずつ黒くなっていき、新品の時よりずっと使いやすくなっている。

    これからどう変わっていくのか楽しみだ。

  • HARIOの急須とマグカップ

    毎日使っているHARIOの急須とマグカップ

    ガラスの急須とマグカップは、飲み物の色がそのまま見えるところが良い。中が見えるだけで、なんとなく気持ちがすっきりする。
    気づけば毎日このセットを使っている。


    HARIO

    HARIO は1921年創業の日本の耐熱ガラスメーカー。
    元々は理化学用ガラスを作っていた会社で、精度や品質を大切にしてきた歴史がある。普段使いの製品にも、その丁寧なもの作りがしっかりと残っている。
    また、ガラスは100%天然鉱物から作られていて、安心感がある。


    急須

    緑茶やほうじ茶を入れる時に使っている。
    茶葉がゆっくり開いていく様子や、お茶の濃さが見えるのが面白い。
    付属の茶漉しは使っていないが、茶葉が詰まって困ったことはない。また、注ぎやすく、液だれし難いのでストレスなく使える。

    陶器の急須はお茶の味がまろやかになる気がするが、ガラスはお茶の味をそのまま素直に楽しめる。


    マグカップ

    マグカップは、お茶やコーヒー、何にでも使っている。
    陶器のカップも色々持っているが、結局こればかり手に取ってしまう。
    汚れが付き難く、食洗機にも電子レンジにも対応しているので、気軽に使える。軽くて扱いやすいところも良い。

    それと、この少し丸みのある形も気に入っている。
    香りマグという名の通り、お茶やコーヒーの香りをより感じやすくなる気がする。


    購入先

    HARIO 急須 (Amazon JP)
    HARIO マグカップ (Amazon JP)

  • 鉄フライパンで餃子を焼く方法——くっつく理由と対処法

     蒸し水を入れる前、餃子はくっついてない。

    鉄フライパンでタンパク質を焼くのには慣れていた。
    だから、餃子も同じように焼けるだろうと思っていた。

    冷凍餃子を解凍し、余分な粉を落とすために皮を水で洗った。

    完全にくっついた。

    その後、餃子を70個焼いて気付いたことがある。

    餃子を上手く焼く上で重要なのは4つ。
    予熱、油、水分管理、適切な道具。


    4つのポイント

    鉄フライパンで調理する時の基本は盾——食材がフライパンに直接結合しない状態を作ること。予熱と油がその役割を担う。

    餃子の場合はこれに加えて、盾を維持する水分管理と、接着面を断ち切る矛——道具の選択が重要になる。


    予熱+油——盾

    十分に熱されたフライパンは、食材が触れた瞬間に表面を焼き固める。油は食材とフライパンの間に入り込み、直接接触を防ぐ。
    これら2つが合わさって初めて盾として機能する。

    予熱が足りないと表面が固まる前に結合し、油が少な過ぎると金属面が露出してくっつきやすくなる。


    水分管理——盾を維持する

    水分が多いとフライパンの温度が下がり、盾の機能が弱まる。
    そのため、皮は乾いた状態のものを使い、蒸した後は蓋を取って水分を完全に飛ばした方が良い。


    道具——矛

    フライ返しの役割は、皮とフライパンの接合面に刃を滑り込ませて結合を断ち切ること。先端が薄く硬いほど少ない力で差し込める。

    シリコンはしなる上に先端が鋭くない。
    木は硬いが先端が厚く鈍い。
    どちらも切れ味が不十分なため、接合面を突破出来ない。

    唯一突破出来るのは、鋭く硬いステンレスフライ返しだ。


    なぜ餃子は鉄フライパンにくっつくのか

    餃子の皮は小麦粉で出来ている。

    デンプンは熱と水分に晒されると糊化し、フライパンの表面に結合する。熱が加わると収縮してフライパンから剥がれるタンパク質とは逆に、デンプンは熱と水分を受ける程くっつきやすくなる。

    実際、蒸し水を加える前は、餃子はくっついていなかった。
    水分がフライパンに入った瞬間、くっつき始めた。
    これで最初の失敗も納得出来る。皮を水で洗ったことで、調理を始める前から余分な水分が加わっていた。


    焼き餃子はくっつけて剥がすプロセスがいる

    焼き餃子のカリカリした食感は、デンプンの糊化によるものだ。
    糊化したデンプンが水分を失って固まることで、パリッとした食感が生まれる。

    つまり、くっつくこと自体は悪ではない。カリカリの素でもある。

    ただし、密着の質が重要になる。

    盾が機能した状態で蒸し水から糊化が始まる場合、皮とフライパンの間に焼き固まった層が出来ている。そのため、結合は表面的になり、水分が蒸発しきるとフライ返しで離せる位のくっつき具合になる。

    一方、最初から皮が濡れている場合は盾の機能が弱まり、デンプンがフライパンの金属面に直接結合してしまう。
    この状態で焼き固まると、フライ返しでも対処出来ないほど強固にくっついてしまう。

    はっきりとは分からないが、そういうことが起きていると考えられる。  


    皮の質感で難易度が変わる

    2種類の生餃子を買い、それぞれ生と冷凍で焼き比べてみた。
    同じ餃子なら、生と冷凍で結果は大きく変わらなかった。
    しかし、餃子の種類によって難易度が全く違った。

    水分が少なく弾力がある硬めの皮の餃子は簡単に焼けた。
    少しくっついても、シリコンフライ返しで軽く押せば剥がれた。
    皮も破れない。綺麗に仕上がった。

    水分が少ない硬めの皮は、あまり打ち粉が付かない。

    くっつきなし。破れなし。

    一方、水分を多く含む柔らかい皮は難しかった。
    端は剥がれるが、中央がフライパンにくっついたままで、剥がす際の圧力も皮を破る原因となった。

    水分を多く含む柔らかい皮は、打ち粉が沢山付く。

    中央が破れた

    シリコンフライ返しでは、焼き固まった皮や羽根の下に入り込めない。

    油を増やしてみた。
    蒸し水を冷水から熱湯に変えてみた。
    何も変わらなかった。

    予熱・油・水分管理が整っていても、水分を多く含む柔らかい皮では最後の「剥がす」という行為が最大の難関になる。

    ここで決め手になったのが道具——ステンレスフライ返しだった。

    ステンレスのフライ返しなら、シリコンでは入り込めない場所にも滑り込める。力が分散されず、少ない抵抗で皮とフライパンの間に入り込めるので、外圧を最小限に出来る。

    フライ返しを変えた途端、今までの苦戦は終焉を迎えた。

    ステンレスのフライ返し。
    皮や羽根の下に滑り込める。

    シリコンのフライ返し。
    しなって、皮や羽根の下に滑り込めない。


    焼き方

    フライパンを予熱する
    煙が出る前まで熱する。薄ら煙が見えたら、少し火を弱める。

    油を引く
    フライパン全体に行き渡らせて少し余るくらいが目安。
    26cmのフライパンで大さじ1/2〜1杯程度。
    十分に予熱出来ていると、油はサラサラとよく広がる。使い込んでフライパンに油が馴染んでくると、必要な量も減っていく。

    餃子を並べる
    平らな面を下にして並べ、底面が薄く色付くまで焼く。
    先に並べた餃子が焦げ付かないよう、ここでは少し火を弱めた方が安心。

    水を加える
    餃子の高さ1/4〜1/3程度になる量を入れる。
    羽根つきにする場合は、水に片栗粉や小麦粉を少量混ぜる。

    蓋をして蒸す
    蓋をして、水分がほぼ蒸発するまで蒸し焼きにする。

    蓋を取り、水分を飛ばす
    パチパチと音がしてきたら蓋を取り、水分を完全に飛ばす。
    羽根や餃子の端がきつね色になるまで焼く。この時、少量の油を追加するとカリカリが増すようだが、なくても良い。
    火力は、中火〜弱火の方が安全——強火だと焦げやすい。

    剥がして盛り付ける
    皮や羽根の下に差し込み、フライ返しで丁寧に剥がす。


    終わりに

    最初はくっつかないように焼く方法を探っていた。
    料理のプロなら出来るのかもしれない。
    でも素人の私には難しかった。

    だから、餃子はくっつく料理という前提で、予熱・油・水分管理で密着を最小限に留め、最後は道具に頼ることにした。

    ステンレスのフライ返しに変えた途端、今まで苦戦していたのが嘘のように綺麗な餃子が出来た。完璧な方法ではないかもしれない。でも私には、これで十分だった。

    鉄フライパンで焼いた餃子は、他のフライパンでは得られないような美味しさがある。

    手間をかける価値はあると思う。